司法書士試験

以下の3点から,司法書士試験の憲法の対策をご説明します。

 

 

1. 判例はどこまで学習するか?
2. 学説はどこまで学習するか?
3. 違憲審査基準はどこまで学習するか?

 

 

1. 判例はどこまで学習するか?


【押さえるべき判例】
過去に出題された判例を見る限り,司法書士試験は,押さえるべき判例の数が多い試験であるとは言えません。有名判例(通常の憲法のテキストに掲載されている判例)ばかりから出題されています。また,新しい判例の出題もあまりありません。
よって,押さえるべき判例の数を増やす方向の学習は必要ないと言えます。

 

【判例をどの深さまで学習するか?】
「判例をどの深さまで学習するか?」とは,判旨まで学習するかということです。
これは,議論の余地はありません。

 

判旨まで学習して下さい。

 

司法書士試験においては,判旨まで聞いてきますので,単に判旨の結論を記憶するだけでは対応できません。

 

 

 

2. 学説はどこまで学習するか?


司法書士試験の憲法の学説問題は,「平成15年度〜平成23年度」と「平成24年度及び平成25年度」に分けて考える必要があります。

 

【平成15年度〜平成23年度】
平成15年度〜平成23年度は,どの憲法のテキストにも掲載されている典型的な論点からの出題でした。
ex. 内閣に法律案提出権があるか(23-2,17-3),生存権の法的性質(20-1)

 

【平成24年度及び平成25年度】
平成24年度及び平成25年度に出題された学説問題は,通常の憲法のテキストには掲載されていない論点からの出題でした。
・比例代表選挙で選ばれた議員の党籍変動(25-2)
・条例に罰則を設ける場合の法律の委任の要否・程度(24-3)

 

このように,司法書士試験の憲法の学説問題は,聞いている論点の細かさから「平成15年度〜平成23年度」と「平成24年度及び平成25年度」に分けることができます。
では,どの深さまで学説問題対策を行う必要がある(どこまで知識として入れる必要がある)のでしょうか?

 

その答えですが,「平成15年度〜平成23年度」の深さ,つまり,典型的な論点の学習で結構です。なぜなら,平成24年度及び平成25年度に出題された学説問題まで知識として対応する対策をすると,憲法のテキストの分量が現在の2倍程度になってしまうからです。通常の憲法のテキストに掲載されていない学説は,多数あります(よって,学説問題において冒頭の説の説明をよむときは,「知っている説だ」と速断せず,丁寧に読んで下さい。「知っている学説と似てはいるが,別の学説であった」ということはあり得ます。先入観を持たずにお読み下さい)。
平成24年度及び平成25年度の学説問題(知識として準備していない学説)は,私が提唱している「解法型」で解いて下さい。

 

 

 

3. 違憲審査基準はどこまで学習するか?


そもそも「違憲審査基準って何?」という方もいらっしゃると思いますので,まずは違憲審査基準の説明からします。

 

 

Realistic text 憲法

(『Realistic Text 憲法』P185)

 

 

違憲審査基準とは,法令又は法令の適用が憲法に違反しているかどうかを判断するにあたって,裁判所が使う基準です。裁判所は,人権の内容・事案によって,この違憲審査基準を使い分けます。受験生の方からすると「使い分けるなんてメンドーだな〜」と思われるかもしれませんが,人権によって保護の程度が異なりますし,裁判所の考え方も時代によって変わってきますので,毎回同じ違憲審査基準であるとは限りません。

 

私は,この違憲審査基準を「裁判所がかけるメガネである」とご説明しています。厳しいメガネをかければ(厳しい違憲審査基準を使えば),違憲判決は出やすくなります。逆に,ユルイメガネをかければ(ユルイ違憲審査基準を使えば),違憲判決は出にくくなります。

 

それでは,そのメガネ(違憲審査基準)をどこまで学習するかという話ですが,以下のように考えて下さい。。

 

判例が採った違憲審査基準に限定せず学習する

 

つまり,違憲審査基準については,多めに拾っ必要があります。現在の司法書士試験は,まだ「違憲審査基準をひととおり把握していないと合格できない」とまでは言えません。また,司法書士試験の場合,憲法は択一でしか問われませんので,「自分で違憲審査基準を立て,結論を導き出す」ということも不要です。
しかし,「違憲審査基準を普通に聞いていくる試験になるのではないか?」という“兆候”があります。

 

 

(平成24年度 第1問)
イ 財産権を制限する法律は,職業選択の自由に対する社会経済政策上の積極的な目的の規制と同様に,立法府がその裁量権を逸脱し,その規制が著しく不合理であることが明白である場合に限り,違憲無効となる。
→ 誤り

 

 

たしかに,判例は,薬事法距離制限事件(最大判昭50.4.30)と小売市場事件(最大判昭47.11.22)においては,規制目的を「消極目的規制」と「積極目的規制」に分け,消極目的規制については「厳格な合理性の基準」,積極目的規制には「明白(性)の原則」という違憲審査基準を用いて判断しました。
そこで,上記の平成24年度第1問・イは,財産権を制限する法律についても,「積極目的規制に対するのと同様,『著しく不合理であることが明白である場合に限り,違憲無効となる』という明白(性)の原則という違憲審査基準を用いる」と言っています。
しかし,判例は,財産権を制限する法律が問題となった森林法共有林事件(最大判昭62.4.22)において,薬事法距離制限事件(最大判昭50.4.30)と小売市場事件(最大判昭47.11.22)のような規制目的二分論を明確には採用しませんでした。判例は,森林法共有林事件(最大判昭62.4.22)において,以下のような基準を立てました。

 

裁判所としては,立法の規制目的が公共の福祉に合致しないことが明らかであるか,又は規制手段が右目的を達成するための手段として必要性若しくは合理性に欠けていることが明らかであって,そのため立法府の判断が合理的裁量の範囲を超えるものとなる場合に限り,違憲判断をなし得る。

 

平成24年度の第1問・イは,この判例の考え方の移り変わりまで聞いています。ただし,平成24年度の第1問は組合せ問題であり,このイの肢を無視しても答えがでました。しかし,今後は,「違憲審査基準について聞いている肢の正誤を判断できないと答えが出ない」という問題が出る可能性があります。

 

なお,この説明だけですと,私が冒頭で申し上げました,「判例が採った違憲審査基準に限定せず学習する」の答えにはなっていません。判例が採っていない違憲審査基準も拾って頂きたいと考えているのは,「引っかけとして出された肢の正誤を判断できるようになるため」です。

 

たとえば,私が作った肢ですが,以下の肢を読んで正誤がわかるでしょうか?(事実関係をかなり簡潔に書いています)

 

 

デモ活動での蛇行進について,最高裁判所は,表現の自由は,当該表現のもたらす害悪が明白かつ差し迫ったものである場合にのみ規制することができるとし,この事案について憲法に違反しないとした。
→誤り

 

 

これは,「明白かつ現在の危険」の基準であり,非常に厳しいメガネです。非常に厳しいメガネであるため,最高裁判所が正面から採用したことはありません。このことを知っていれば,上記の肢がおかしいということがわかります。

 

 

このようなことができるようになるためにも,違憲審査基準については,以下の2点を拾っていって下さい。

 

・どのようなメガネか(簡単にでもよいので定義が言えるとよい)
・厳しいメガネなのかユルイメガネなのか(これが結構重要です)

 

 

 

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