司法書士試験

不動産登記法は,民法と比べて上手く学習できないという受験生の方が多くなります。主な原因は,以下の2点です。

 

 

1. 実務のイメージが湧かない
2. 最初に学習する総論がよくわからない

実務のイメージが湧かない

予備校の講義では,イメージが湧くように,(試験勉強に必要な範囲で)実務がどのようなものであるかの説明がされます(申請書の提出があっさりしすぎていることや,登記所がボロい建物であることが多いことなど,くだらないことも含めて)。しかし,その説明だけでは十分なイメージを形成できない方もいます。また,独学の方ですと,そもそも上記のような説明を聴くことができません。
そこで,以下のマンガをお読みになることをお薦めします。

 

 

お客様から依頼を受け,申請書を作成し,申請をし,登記完了後にどのようなことをするかまで,マンガでわかりやすく書かれていますので,イメージはかなり湧くようになります。
もちろん,マンガなので知識の網羅性はありませんが,試験に必要な登記の考え方で本質的で重要な話も多く書かれています。

最初に学習する総論がよくわからない

不動産登記法は,「総論」と「各論」から構成されます。各論とは,「所有権」「抵当権」「根抵当権」など権利ごとに説明がされているものを指します。それに対して,総論とは,基本的に各論のすべての権利に共通して当てはまるルールが説明されているものを指します。

 

ほとんどのテキストが,「総論→各論」の順で掲載されています。しかし,総論とは,基本的に各論のすべての権利に共通して当てはまるルールですので,どうしても抽象的な説明となってしまいます。そのため,総論は各論を学習してからでないとわからない箇所が多くなるので,以下の順序で学習するのが最適です。

 

各論に必要な総論部分 → 各論 → 残りの総論

 

総論を一気に学習するのはナンセンスです。不動産登記法の学習経験がある方を除き,いきなり総論をすべて学習してもわかりません。

 

ただし,いくら順番を工夫しても,「後で学習する部分が終わっていないとわからない箇所」はあります。それは,予備校の講義であれば,講師がすべて指摘します。独学の方は,その部分がわかりませんが,「後で学習する部分が終わっていないとわからない箇所もあるんだな」という心構えで学習して下さい。

不動産登記法こそパンデクテン方式で

「不動産登記法は,最初に学習する総論がよくわからない。だから,『各論に必要な総論部分 → 各論 → 残りの総論』で学習するべきだ」と上記にきさいしましたが,この点をもう少し掘り下げます。
不動産登記法のポイントは,これです。

 

 

不動産登記法こそパンデクテン方式で学習する

 

 

パンデクテン方式でどう学習するかを記載したいところですが,パンデクテン方式をご存じない方もいらっしゃると思います。そこで,まずはパンデクテン方式からご説明します。
パンデクテン方式が採用されている最も有名な法令は,「民法」です。

 

パンデクテン方式とは,簡単にいうと「共通項を取り出して前に持ってくる」ということです。民法の財産法は,以下のようになっています。

 

 

民法パンデクテン方式

 

 

下から考えていきます。

 

「契約各論」に規定されているのは,売買,賃貸借など個別の契約のみに当てはまる規定です。たとえば,賃貸借の規定でいうと,賃貸人に無断で賃借権の譲渡または転貸をした場合には,賃貸人は原賃貸借契約を解除することができます(民法612条2項)。この場合,無断譲渡または無断転貸をやめることを催告せずに解除することができます(民法612条2項には「催告」の文言はありません)。理由は,以下のとおりです。

 

 

民法UのテキストP211

(『Realistic Text 民法U』P211より一部抜粋)

 

 

上記のふき出しに書かれている理由により,無断譲渡または無断転貸の場合は,信頼関係が一発で「0」になります(それを表したのが,上の図です)。

 

この民法612条2項の無催告解除は,「契約総論」(基本的にすべての契約に共通する規定を置いた箇所)の民法541条(相当の期間を定めて催告したうえで解除できる)の特則です。つまり,一般的には,契約を解除するには,催告をする必要があります。しかし,無断譲渡または無断転貸の場合には,無催告解除ができるため,「契約各論」の民法612条2項に特則を置いているわけです。

 

逆にいえば,「契約各論」に特則がなければ,「契約総論」に戻ります。上記の図にあります「賃料不払いによる解除」がその例です。賃料不払いによる解除について,「契約各論」には特則がありませんので,「契約総論」の民法541条(相当の期間を定めて催告したうえで解除できる)に戻ることになります(賃貸借の場合,通常は1〜2か月分の不払いでは解除できないということはありますが)。

 

もし,「契約総論」にもなければ,「法定債権関係」(事務管理,不当利得および不法行為)にも適用される「債権総論」に戻ります。「弁済」(民法474条以下)がその例です。契約にも事務管理,不当利得および不法行為にも,「債権総論」の弁済の規定は適用されます。

 

もし,「債権総論」にもなければ,「物権」にも適用される「総則」に戻ります。たとえば,「意思表示」(民法93条〜98条の2)です。意思表示は,物権にも債権にも関係があります。

 

 

このように,上に行くに連れ,適用範囲が広くなるのです。
※もう一度,冒頭の図を示します。

 

 

民法パンデクテン方式

 

 

では,パンデクテン方式(共通項を取り出して前に持ってくる)はご理解いただけたということで,それをどのように不動産登記法に当てはめていくのかをご説明していきます。

 

不動産登記法は,たしかに,民法のように理由や趣旨が多くはありません。手続法であることや研究している学者が少ないことなどが原因です。この点が,司法試験から転向した方が躓く原因となります。

 

しかし,不動産登記法は,実際に実務で使われているのです。それに従って,登記官,司法書士,土地家屋調査士さんなどは日々の業務を行っています。
つまり,これらの者にわかりくいものであってはならないのです。よって,一貫したルールは存在します。

 

たしかに,民法は学者本がくさるほどありますので,そのほとんどに理由や趣旨があります。しかし,「一貫したルール」という点では,不動産登記法のほうが多いと私は考えています。
(注)もちろん,基本的に先例は単発で出ますので,必ずしも一貫したルールで説明できない知識もあります。

 

よって,実は,パンデクテン方式(共通項を取り出して前に持ってくる)という方法が最も活きるのは,不動産登記法であると考えることができます。実際に私の不動産登記法の講義は,この思想で進めています。

 

基本的な例を挙げると「添付情報の提供の要否」があります。

 

 

不動産登記法TのテキストP82

(平成26年度向け『Realistic Text 不動産登記法T』P82)より一部抜粋

 

不動産登記法TのテキストP87

(平成26年度向け『Realistic Text 不動産登記法T』P87)より一部抜粋

 

 

各論において添付情報の提供の要否を考えるときは,登記ごとに考えるのではなく,このような「共通項を取り出したところ」に戻ります。

 

 

添付情報以外にも,この視点は多数存在します。たとえば,担保権の登記事項では,以下のような共通項を取り出すことができます。

 

 

不動産登記法UのテキストP8

(平成26年度向け『Realistic Text 不動産登記法U』P8)より一部抜粋

 

 

各担保権の登記事項を考えるときは,これを軸に記憶します。

 

 

もう1つ例を挙げると,抵当権設定の登記の登記原因及びその日付は,「年月日金銭消費貸借年月日設定」「年月日保証委託契約による求償債権年月日設定」などいくつか記憶する必要があります。単に記憶するのは苦行ですので,まず以下のような考え方を学ぶ必要があります。

 

 

不動産登記法UのテキストP3

(平成26年度向け『Realistic Text 不動産登記法U』P3)より一部抜粋

 

 

これを基準に,債権契約と物権契約を考えていきます。

 

 

 

不動産登記法は,このようにパンデクテン方式で学習するのがベストです。

 

また,不動産登記法の問題は,横断的に知識を問われることが非常に多いこともこの学習方法を採る理由となります。受験経験のある方は,この点はご存知だと思います(受験経験のない方は,知っておいて下さい。これは,不動産登記法の勉強法を考えるにあたって非常に重要な要素となります)。

 

 

 

 

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